47都道府県 制覇への道【随時更新】
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他人と生きていく
一月は旧友と集まる機会が非常に多い。
流れていく時間を感じやすい季節だから、昔の友人が懐かしくなるのだろうか。
今年も、懐かしい面々と再会して、近況報告をし合った。
今年のビッグニュースは、中学の頃、僕とお笑いコンビを組んでいたお調子者のTが、結婚するという話。
今まで、でき婚をした友人は何人かいたけれど、ちゃんと婚約して、プロポーズして、結婚、という流れを取るヤツは、Tが初めて。僕らはかなり驚いて、すぐに「おめでとう」の言葉もでなかったほどだが、よく考えてみれば、平成五年組は今年で二十三歳。母が僕を産んだのも二十三歳だったわけだし、晩婚化が進んでいる現代とはいえ、結婚の話が出るのはおかしくもなんともない。
そういえば、浮気ばっかりしているイケメンのNも、浮気はしてるけど今の彼女と結婚すると思う、と言っていた。豆腐屋のYも、生徒会長だったMも、能天気なOも、みんな長く付き合っている人がいて、それなりに落ち着いているらしい。
昨年会ったときには、恋愛への不満大会みたいになっていたのに……。一年の間になにがあったのやら。
しかしこうも一斉に変わるのは、僕らがそういう年齢へ達したということなのだろう。恋から愛へと言うと、あまりに陳腐だけれど、僕らは、初めてわずかに感じた老いや、いよいよ本格化してきた将来への不安のなかで、ようやく自分の人生を考え始め、その一つの結論として「他人と生きていく」ことを理解したわけだ。
偶然いい人に出会えたのもあるのだろうけど、僕らの精神がちょっぴり大人になったことが、この落ち着きに繋がっているのだと思う。人を愛するのも、自分自身が成熟していてこそ、ということだ。
かく言う僕も、最近はすっかり落ち着いた。まだまだ抱えている人間的問題もあるけれど、今なら、人が結婚する理由も分かるし(前まで分からなかった)、随分と恋愛に希望的になった。もしや僕は人の道を外れたのでは、と思い上がっていたけれど、案外不幸にはなれないものだ。
同窓の友とたまに集まるのは楽しいし、一緒に成長していっている仲間がいることを知ると、なんだか頼もしい。またすぐ遊ぼうな! と言いながら、次集まるのは、どうせまた来年の一月になるのだろうけれど、そのとき僕らは、どう変わっているだろう。Tの結婚生活も気になるところだし、結婚ラッシュも間近な雰囲気……。
もしかすると、一周して、また愚痴大会になるかもしれない。
今日私はゴロゴロとTVを観る
もうこんな風にできるのも、最後かもな。
そんな言葉が飛び交い始めた、大学四年
、目前の冬。
長い長い学生時代だった。
小学生の僕が、いまの僕を道端で見かけても、きっと気づいてはくれないだろう。それくらい、僕も、みんなも、大人になった。
ドラクエに熱中しすぎて、現実とゲームとの境があやふやになったのはいつだったか。
ついこの間は、何日もかけて、鈍行で本州の端っこまで行ってきた。
ありあまる時間は学生の特権。素晴らしき青春の日々だ。
異変が来たのは、一年前くらいだっただろうか。
誰と、どこで、いくら遊んでも、心身を完全に満たすような充実感を得られなくなってしまった。どこかで、足りない部分がある。
そして、段々と、「無駄に時間を浪費している」感覚を覚えてきてしまった。
こんなことをしていていいのだろうか?
頭の隅で囁くもう一人の自分が、現れるようになった。
お金を稼ぎ、独り立ちして、社会の一員になる。僕の心は、自然と、それを望んでいるようだった。
もちろん、就職なんてしたくない。ずっと遊んでいたい。だけど、本当の本当にそうしたいか、と問われると、僕は閉口してしまう。やっぱり、僕が僕として、社会に生きる場所を確保しなければいけない、心の底でそう思うのだ。
だから、あと少しの間、精一杯遊びたい! いま、強くそう感じている。
人でもモノでも、別れの直前は、妙に愛おしく感じるものだ。
学生最後の一年。
貴重な時間だからじっくり過ごそう、とは思わない。
だらだら、ぐだぐだ、くだらないことで笑いあって、くだらないことで悩んで、あっという間にすぎていけばいい。
『明日世界が終わるとしても、今日私はリンゴの木を植える』じゃあないけれど、『来年で学生生活が終わるとしても、今日私はゴロゴロとTVを観る』といった具合で。
だって、もうこんな風にできるのも、最後なんだから。
12月28日 僕は
八戸の夜。
眠っている後輩をホテルに残して、町へ出る。
気温はマイナス1度。凍結した道路を、わずかに残る点字ブロックの凸凹を頼って歩く。凍えるような寒さではないが、どこまでも歩いていくのは無理そうだ。
早々にコンビニを見つけて入る。棚には南部せんべいが並んでいる。
地域限定なのだろうか、牛タン弁当を買う。店員さんが美人だ。
久しぶりに一人になった。もう旅も三日目。そもそも出発以前から、用事尽くしであった。
嗚呼、一人。
寒さがますます、孤独を演出してくれる。
僕は一人でいる時間が好きだ。落ち着くような、昂ぶるような、不思議な思いがする。
一人だからと言って、特別なにをするでもない。だけど、なにをしたっていい。それがいい。
ましてや、ここは本州の果て。いつもよりクレイジーに振る舞ってみようか。
ほくそ笑みながら、ホテルへ戻る。どこに来たって、想像の世界が一番楽しい。旅は、想像を膨らませるきっかけだ。
明日はどんなことが起きるだろう。
そろそろ、洗濯が終わる時間だ。
紫のパンジー
「悩んでいる時間はないんですよ。あなたも囲碁を勉強しているからわかるでしょう。あー、これはしまった、という手のあとに、ウジウジ悩んでいたら、その局はもう負けですよ。そうじゃないでしょう。その手を、どう活かすか。悪手を、ものすごい手に見せかける方法を、必死に考えるんですよ。悲しみは、心の奥で持っていればいいんですよ」
野坂昭如氏が亡くなった、翌日のことだった。
先生の心の奥底。
六十六年間、前だけ見て生きてきた先生の、心の奥底には、何が積もっているのだろう。
「葬儀で泣き崩れるなんてみっともない」
先生は言った。
「どうしても悲しいときは、家で、一人で泣けばいい」
先生は泣いたのだろうか。
本当は悲しいのだろうか。
それすらも分からないほど、先生は普段通りだった。
未熟なのだ。
僕は、先生の話を聞くたびに、自分の幼さを痛感する。
泣かず、語らず、誰にも見せない心の奥底だけで悲しむ。
やっているつもりでも、僕は結局、誰かが、心の奥底まで降りてきてくれることを願っている。
「ラーメン、ちょっと食べていきますか、忘年会ですからね」
先生が飲んだ後にラーメンを食べると言い出すときは、奥さんがでかけていて、ご飯が家にないときだ。
たまに、あなたは私のことをなんでも知っていますね、と言われることがある。そのたび、少し、恥ずかしくなる。
江古田を行く人々の足が早い。
今年は、悪手ばかり打ち続けてきた。
先生を見送ったあと、ふと思い立って、
北口に降りてみた。なにが変わっていることもない。
これから、僕の心の奥底には、なにが積もってゆくのだろう。
誰にも言えない幸福も、あると思う。
書き殴り
ここひと月くらいに観たもの聞いたもの
歌
今にも解散しそうなギリギリ感。上手く歌う気なんてなくて、その分堂々としてる。逃げて逃げて、たどり着いた場所では、堂々としていられるものらしい。その、楽しそうで気持ち良さそうな顔。この数時間が終わったら、また苦悩の日々なんだろう。芸術に生きるって、こういうことなんだって知る。崖っぷちで輝いてる人が大好きだ。
・東京国際フォーラム インディゴラエンドライブ
iPhoneにいれて聞きたい感じ。声とサウンドが好き。伝わってはこないけど、相性ってやつだろう。ゲスの極みのほうも聞いてみたくなった。
・新宿 ジョアンナさんライブ
プロの境界線を踏み越えた人は、まったく違うんだなと。金をもらってるかどうかじゃなくて、ジョアンナさんはプロの歌手。うまくは言えない。
演劇
・学芸大学 「流れる」
リアルは強い。それを面白く伝える技術と、掘り下げていく根気と体力が必要だと思った。作品の出来うんぬんより、人を泣かせ、なにか特別な行動をさせるのは、ホンモノの証なんだろう。
小説
・火花
情景描写は力んでる感じもするけど、心理描写は簡単なのに深い。魅力的なキャラクターの描き方ってなんだ? 会話文が良い気がする。得意分野があるって羨ましい。
・人間失格
小説がなにか分からなくなった。とにかく面白く、衝撃的。なにかを変えられてしまった。色々考えたけど、説明はできない。すごい。
映画
・マイインターン
サラッと見るのがいい。気負わず、バイト帰りのストレス発散気分。深いものがなくても面白いもんは面白いんだなあ、と。
フォーエバーヤング
真実なんてない、どこにもない、心の中にもない、ただ目の前の出来事を真実だと思っているだけだ! そんな歌を、歌うぜ。
フォーエバーヤング、フォーエバーヤング。
彼らは三回も同じ歌を歌って、フロアはどんどん勢いを増した。
ボーカルの男は三十路、ライブハウス以外では、ゴニョゴニョ喋る、つまらないヤツ。
ドラムの男は、今日が誕生日。三十三歳童貞で、実家暮らしのフリーター。
このバンドの持つ幸福感は、俺の苦悩から生まれているのさ。ボーカルは言う。感動商法に引っかかりやがって。ボーカルは言う。てめえらは十円くらいの価値しかねえ。ボーカルは言う。
十円なめんなよ! と野次が飛んで、ボーカルは嬉しそうにニヤついて、また歌う。
フォーエバーヤング、フォーエバーヤング。
「ブルーハーツの言う、決して負けない強いチカラってなんだ? 俺は信じることだと思った。それだけだが、それができるヤツはごくわずかだ」
このライブのために用意したPVで、彼は言った。
これは奇しくも、僕の師と同じ台詞だ。
フォーエバーヤング、フォーエバーヤング。
やり続けること、表現し続けること。
幸福に包まれたフロアで、男は奇妙に歌い踊り続ける。
真実なんてない、どこにもない、心の中にもない、ただ目の前の彼らだけを、僕は真実だと思った。